■プロフィール

1968年9月13日生まれ、埼玉県狭山市出身。本名・金子統(かねこおさむ)。

川越東高等学校に創立時の第1期生として入学。(第17回インタビューに登場した作曲家の伊藤賢治さんと同期。) 高校卒業後、代々木アニメーション学院在学中に、編集プロダクションにて雑誌記事のイラスト執筆などに従事するようになる。その後、1990年にVジャンプ創刊と同時にドラゴンクエストシリーズのスライムを題材とした漫画を連載開始。以後、スライムを主人公としたギャグ、冒険活劇を描いた漫画(『スライム冒険記』、『スライム大作戦』、『スライムもりもり』『スライムドーン‼︎』)を多数執筆。

現在に至るまでドラゴンクエストに関連した仕事に関わり続けてる重鎮的存在で、また様々なゲームのキャラクターデザインなども多数手がけており、幅広い分野で活躍中。

――本日は宜しくお願いします。伝説の1期生であり、かつ私もVジャンプで育った世代としてあのスライムの漫画を手掛けられていた方ということでインタビューできて光栄です。 

 宜しくお願いします。 

――事前に経歴を知って驚いたのですが、(埼玉県)東松山南中学校卒業なんですね。私も実は東松山市出身なんです。

 あ、そうなんですね。生まれは(埼玉県)狭山市なんですけれども、中2の時に東松山に転校してそれからなんです。 

――あ、そうなんですね。 

 そうですね。当時は本川越からバスに乗って通っていました。当時は新設校でほとんど何の情報もなく入ったところがありましたが、今では運動部の活躍や進学実績などが凄い印象です。 

――一期生は創立間もないこともあって、先生方も若くて距離が近く、独特の雰囲気があったと聞いています。

 全校生徒が100人でクラスが3つだったんですけれども、もうみんな顔は見たことあるような感じでしたね。次の期以降は500人、1000人と増えていったので、自分たちが3年生の時は先輩なはずなんですけど少数派だったので、少し肩身の狭い思いをしたりしていました(笑)。

――そうなんですね。確かに5倍以上違いますし。高校時代は柔道部だったんですよね? 

 ええ、国語の斉木先生が最初の担任で柔道部の顧問でしたので、印象に残っている先生としてよく覚えています。 柔道部の合宿は毎日の練習キツかったですが、そこで感じた達成感今でも役立っていると思います。 

――高校卒業後は代々木アニメーション学院に入られたと伺っているのですが、その当時から漫画やイラストの仕事に就きたいと思っていらっしゃったところがあったのでしょうか?  

 子供の頃にドラえもんを読んで藤子不二雄先生に憧れているところがありましたが、漫画家になると具体的にはっきり目指していたということではなかったんです。

 ただ、高校時代当時でもラクガキみたいな漫画を書いていて一部のクラスメイトに見せたりしていて、イトケン(同期の伊藤賢治さんのあだ名)がそれを見てお互いの将来の夢とかを話したりもしていましたね。 

 なので、漠然とアニメや絵を描く仕事はやりたいなとは思っていて、そういうのを勉強したかったので、代々木アニメーション学院に入学しました。

 その後、あるファミコン雑誌の読者ページにドラクエの絵を投稿する中で、某編集プロダクションの社長にスカウトされて雑誌のイラストなどの仕事を行なっていたんです。

 また、これは後から知ったのですが、その編集プロダクションの中で、ドラゴンボールの鳥山明先生のファンクラブ会報の仕事を行なっていて、あの鳥山明先生を見出したことでも有名な鳥嶋和彦さんとウチの社長が知り合いだったんです

――なるほど。そこからVジャンプに繋がってくるんですね。 

 ええ、鳥嶋さんがVジャンプを創刊する際に、その社長に「お前のところにドラクエのスライムかファイナルファンタジーのチョコボの漫画を書ける奴はいないか?」という話があったようで、そこから私が呼ばれて漫画の連載が始まった形です。 

――そこから今でもスライムの漫画を描き続けているのが本当に凄いなと感じています。 

 そうですね。もう25年以上になりますね。 

かねこさんの代表作『スライムもりもり』『スライムドーン‼︎』

――私自身もかねこさんの漫画やイラストで育った世代ですし、私の8歳の息子も『スライムもりもり』と『スライムドーン!!』をケラケラ笑いながら読んでいます。さらにその方が高校の1期生の先輩だったというのが本当に感慨深いものがあります。

 かねこさんもやはり元々ドラクエが好きだったところから始まったんでしょうか?

 ちょうど高校に入った頃くらいにドラクエが発売された時期でした。当時のゲームで戦うという動作はインベーダーゲームをはじめ、ほとんどアクションだったので、「文字だけで戦う」というのは最初はどうも理解できないところもありました。なので、実は最初は全然やっていなかったのですが、周りの友達から「エンディングが映画みたいだった」などの話を聞いたりして、さらに「良いから騙されたと思ってとりあえずやってみろ」ということでソフトを貸してくれたんです。そこからハマってしまった感じです。なので、もしあの時に当時のクラスメイトが薦めてくれなかったら今こんな仕事していなかったかもしれないですね。 

――その話、イトケンさん(伊藤賢治さん)も同じようなストーリーだったと思います。当時の友達がやっているのをたまたま知ったということからゲーム音楽の存在知ったと聞きました(詳細は第17回インタビューを参照)。そう考えると、やはりドラクエというゲームの持つエネルギーというのは凄いなと思います。私も熱中しましたし、やはりトップクラスに思い入れのあるタイトルです。ちなみにかねこさんはドラクエの中で思い入れのあるナンバリングは何になりますか? 

 ⅢとⅤですね。ゲーム性でいうとⅢ、シナリオでいうとⅤですね。 

――なるほど、その感覚私もすごくわかります。Ⅲは社会現象にもなりましたが、どうしてもやりたくて父親に頼み込んで並んで買ってもらって、すごくやり込みました。Vの親子3代を通して紡がれる壮大なストーリーも凄く印象に残っています。  

 当時はゲーム機自体もほぼファミコンしかない状態でしたよね。今ではスマホなどを含め、本当に色々選択肢がありますが、35年程前の私が高校生だった頃からこんな世界になっているとは全く想像もしていなかったです。 

かねこさんの漫画を読むインタビューアーの息子

――それでもずっと続いているドラクエはやはり凄いコンテンツだと思います。かねこさんはこれまでスクウェアエニックスの方と直接お仕事されたりもしていたんですか? 

 ええ、何回かあります。堀井雄二さん(ドラクエの生みの親)とも何度かお会いしたことがあるんですが、私も緊張して上手く話せない存在ですね。まあ神様ですから(笑)

――かねこさん自身もドラクエの伝説的な伝道師だと思いますよ。現在のお仕事の状況をお聞かせいただけますか?  

 今はちょうど『スライムドーン!!』が完結したところです。『スライムドーン!!』で今自分の持っているものを出し切ったようなところもあるのですが、次の作品のアイデアを練っている状況です。引き続きスライムの漫画は描いていきたいとは思っています。

――ええ、ぜひ続けていただきたいです。私の息子ともども楽しみに待っております。また、今回かねこさんにインタビューをしたいと思ったきっかけがイトケンさんのSNSでの書き込みだったんです。 卒業されてから30年以上も経っているなかで、イトケンさんが「いつか二人でコラボしたい」とずっと思われているという関係性が個人的にはすごく感動的でした。ゲームのキャラクターデザインやシナリオをかねこさんが作って、イトケンさんがその世界観を紐解いて、音楽を作るという。ぜひ実現いただきたいです。

 ぜひやりたいですね。年齢的にもうそこまでたくさんチャンスもないかもしれないですし。  

伊藤賢治さんのTwitterより(かねこさんとのコラボを語ったツイート)

――ありがとうございます。最後に、かねこさんが今に至った中でこういう心がけや大事だと思ったことを今の高校生へ向けてメッセージとしていただきたいです。  

 本当に先のことは予想出来ない時分になっているので、何がどこに繋がるかもわからないと思います。私も高校時代に友達にドラクエを借りなければこの業界にいなかったですし。だからこそ、遊びでもなんでも少しでも自分が興味があることにどんどんやってみるということが大事かなと思います。

 高校生活の中で「これって知ってる?」と流行っているものを勧められた時も「知らないけど何それ?」という形で会話に入っていければ良いかなと。無理に流行りを追いかける必要はないとは思いますが、「知らない」と伝えることからでも話は広がっていくと思います。


 それと、最近の若い子たちは流行っている映画などについて、すべて観るのは大変なので、短縮版であらすじなどをYoutubeで知って観た気になっているというのをネットの記事で読んだのですが、動画なども10分超えると長いみたいな感じになっていますよね。

 それを聞くと本当に時間に追われているんだなと思い、そこまでしなくてもいいじゃないかなと思います。作品を作る側の人間からすると、あらすじだけ見るのではなく、やはりちゃんと全体を観て欲しいと考えています。

――多様性が広がりすぎているところもあって、共通した話題をもつということは少なくなっていますが、誰かが興味を持っている世界に乗ってみることで思わぬ世界が広がってくるかもしれないということですよね。最後の話も、作品という全体を見据えた上で創作をなされている方ならではでの深いお言葉だと思います。今回も色んなご縁でこの機会を作ることが出来たことも、色んなことに飛び乗っていった中でことが進むという一つの証拠かとも思いました。今日は本当にありがとうございました。

 ありがとうございました。 



かねこ統さんのTwitter

https://twitter.com/sam_neco