■プロフィール

栗原 常明教頭

1951(昭和26)年、群馬県邑楽郡明和町生まれ。明和中学校、群馬県立館林高等学校を経て、早稲田大学商学部卒業後、1974(昭和49)年、姉妹校の星野女子高等学校(現:星野高等学校)に赴任。1987(昭和62)年、川越東高等学校に着任。趣味は読書、ゴルフ。同窓会には卒業生の心の支えになってほしいと期待を寄せている。

――先生が川越東高校に着任されたのが1987年のこと。その当時の川越の様子を教えてください。

私が初めて川越を訪れたのは、姉妹校である星野高校に赴任した時ですから、40年以上前になりますが、落ち着いていて非常に良い雰囲気の城下町だなと感じました。買い物などに行っても、人情味があって温かい人が多いと思いましたね。

星野高校で10数年勤めた後、川越東高校に着任したわけですが、当時は校舎の周りは一面田畑で、家がポツリポツリとある程度。私が生まれ育った故郷と同じような環境だったので、非常に落ち着きました(笑)。その時と比べると、いまは学校の周囲の住宅が多くなりました。川越の街も観光客が急激に増え、全国的にも知られる観光地となり、隔世の感がありますね。

――そうした周囲の環境の変化とともに、川越東高校の生徒の気質も変わっていったのでしょうか。

私は開校4年目にこちらに来たんですが、初めははっきり申し上げて目的意識を持っている生徒が少ないように感じられました。何となく学校に来ている、勉強も部活もそこそこに……という雰囲気が強かったように思います。

大きく変わったのは平成になってからですね。現在の星野校長が来られたことが本校にとって大きなターニングポイントになったと思います。星野校長が着任し、本校の教育の基本理念である「文武両道」を打ち出したことで、勉強も部活動も両方精いっぱいがんばろうという意識で教員の意思統一が図られ、指導体制も強化されました。そして、それが生徒にも伝播されていきました。これが非常に大きかったと思いますね。

――勉強するときは勉強に集中し、部活動の時間は精いっぱい自分の好きなこと、やりたいことに打ち込む。そうしたメリハリがつくようになったということですね。

そうですね。また、そうした意識が浸透することで、新入生も「自分はこれをやるために川越東高校に来た」という強い目的意識を持った生徒が増えたように思います。ただ、今も昔も変わらないのは、基本的にまじめな生徒が多いということでしょうか。

「文武両道」が川越東のカラー

――これまでに特に印象に残っている出来事、エピソードがあれば教えてください。

いろいろと思い出に残る出来事はありますが、最近では、やはり4年前の東日本大震災ですね。その日は部活動で200~300人の生徒が登校していたのですが、ものすごい揺れで、とにかく生徒の安全を確保することに腐心しました。ようやく揺れが収まったと思ったら、交通網が完全に麻痺しており、埼京線や東上線などもすべてストップしてしまった。そこで、教職員一同で話し合い、スクールバスで生徒全員を最寄り駅まで送り届けようということになったんです。ピストン輸送して、最後にバスが戻ってきたのが深夜の2時くらいでしたね。このことを教訓に、水や毛布などを用意しておくといったように、学校全体で危機管理に対する意識が高まりました。

昨年の修学旅行でも、北海道から帰ってくるときに大雪に遭遇し、飛行機が飛ばなくて帰りを一日延期したということがありました。翌日も一番遅い便で、羽田に着いたのが夜の11時頃でしたから。生徒は「旅行が一日延びて、得をした」と喜んでいましたけど(笑)。こんなことは私が教員になってから初めてのことだったので、非常に印象に残っていますね。

東日本大震災時にはスクールバスで生徒を最寄り駅にピストン輸送した

――卒業生してからOBとのつながりはございますか。

それほど頻繁ではありませんが、時々卒業生から電話やメールで連絡があり、食事をすることもありますね。

――そんな時はどんなお話をされるのですか。

やはり彼らの在学時代の話が中心になりますが、「今の川越東は自分たちの頃よりずっとレベルが高くなった。勉強も部活動もみんな頑張っていて、卒業生として誇らしく思う」といったことを言われると、やはりうれしくなりますね。特に部活動は、野球部が初めて関東大会に出場するなど、運動部・文化部問わず、いろいろな部が好成績を挙げるようになって、「後輩たち、やるな」と実感しているようですよ。もちろん、我々教員も誇らしく思いますが。

――先生は、この学校にとって同窓会はどのような存在だと思っていますか。

これまでも、現役の生徒が勉強に、部活動に精いっぱい励めるように、さまざまな面から支援してもらって非常にありがたく思っています。現役生も、先輩たちが社会のいろいろな分野で活躍している姿を見ることは励みになるし、「今がんばっていれば、自分もあのようになれるかもしれない」というモチベーションにつながるのではないでしょうか。その意味でも、同窓会にはもっと卒業生の活躍ぶりを伝えてほしいと思いますね。

――先ほど先生も言われたように、川越東高校は今、学業面だけでなく、部活動も高い実績を挙げるようになりましたが、今後どのように進化していくべきとお考えでしょうか。

私たちは、将来社会に出て、少しでも世の中に貢献できる人材、そのために常に自分を高めていきたいという向上心を備えた若者をより多く育てていきたいと思っています。本校では「人にやさしくできる」生徒になることを目標としていますが、そのためには自分自身が精神的にタフでなければなりません。タフな精神を持ち、他者に対する思いやりの心がある生徒を育てたいのです。

このような若者を社会に送り出すためにも、教育の基本理念である「文武両道」、これをさらに推進していくべきだと考えています。そのためにも、学業面で言えば、我々教員がもっと精進努力して魅力ある授業づくりに努め、それを学校内だけでなく、学校外にも積極的に発信していく必要があるでしょう。それによって生徒に良い刺激を与えるとともに、より多くの皆さんが本校を目指したいと思って頂けるようになると思います。

もう一つ、学校生活はやはり楽しくなければいけません。もちろん、苦しいこと、大変なことも多いと思いますが、そうしたことも含めて、楽しい学校生活を送ることができたと心から感じて本校を巣立っていってほしいのです。そうした学校になるために、今以上に教育環境の整備・充実を図っていきたいと思います。

より良い学校づくりのために今後の意気込みを熱く語る