――あの「しっとりチャーハン」を紹介した回は凄く反響があったと聞いています。紹介した板橋のお店が翌日大行列になったらしいですし。ちなみに食べ歩きにハマったのはどういうきっかけだったんですか?
大学生の時に一人暮らしを始めたばかりのタイミングが始まりでしたね。
ちょうど外食に目覚めるというか、ちょっと家庭の味から抜けたいなと考えるような時期だったと思うんですが、割と安い値段で色々な味が食べられるのはラーメンくらいしかなくて。大学生活の中で夜な夜な遊んだ後にラーメン屋に行こうとすると脂っぽい味を出す店が多くて、それらに頻繁に行くようになったところがきっかけだったと思います。
昔は都内にあるラーメン屋の絶対数も今ほど多くなくて、競合相手も少なかったから正直美味しいとはいえない店が多かったんです。
だからもう美味しいという噂を聞きつけたら多少遠くても行くような感じでしたね。時間が取れる学生だからこそ出来たことですが、それがまた楽しかったんですよ。
幼い頃だと外食に行ったとしてもファミリー向けの店が多くて、味の違いがよく分からなかったんですが、ラーメンの食べ歩きから店ごとに味が違うということに目覚めていったんです。
――確かに子どもの頃だともう何でも美味しいと感じるくらいですからね。そこから背伸びをしていきたいという感覚の目覚めはとてもよく分かります。
それと、立地など背景的な部分にも目を向けるようになりましたね。
例えば、車文化が根付いていった中で、物流手段の変化によって街道沿いにトラックの運転手などが好むような脂っぽいラーメンが増えていったというように、ラーメン屋って時代背景や地域性というのがはっきりと出るんですよ。
――なるほど、ラーメン一つでそういう捉え方が出来るんですね。
元々映画撮影を行う中で、ロケハン(ロケーションハンティング:撮影場所探し)が特に好きだったんですね。実際にロケハンに行って背景を選んで行こうとする中で、店に入ったりすると地域性や街の雰囲気が見えてくるんです。
そしてさらにもっと土着的なところを見たいという想いが出てきて、大衆食堂や大衆酒場にも興味が移っていったんです。土着度が高い地域ほど面白い人が多いんですよ。
例えば昼間からお酒飲んでいる人もいたりするわけなんですけど、それに違和感を持つのは平日9-17時で働いている勤め人の感覚なんです。平日に働いている人のために休日に働く人がいるわけですから、逆にそういう人達のための店が必要だったりするんだというのも見えてきて。