■プロフィール

星野 昭 校長

1946(昭和21)年、川越市生まれ。地元の川越市立初雁中学校、県立川越高等学校を経て、日本大学経済学部卒業後、1968(昭和43)年、姉妹校である星野女子高等学校(現:星野高等学校)に社会科教諭として勤務。1989(平成元)年、川越東高等学校に着任、1994(平成6)年、校長に就任、現在に至る。趣味はゴルフ。星野女子高時代から現在に至るまでソフトボール部の指導を行っている。

――まずは、教員になったきっかけについて教えてください。

星野学園は私の祖母が創設者ですが、父の代に高校を創設するにあたって、父や母が苦労した姿を見ていたこともあり、必ずしも教員志望というわけではありませんでした。大学卒業後、外国に行こうと思っていたのですが、ちょうど学園が大きくなっていく時期で、人手が足りないから手伝ってくれと言われてしばらく日本に残ることにしたんです。言い方は悪いですが、“腰掛け”のようなつもりだったのが、ソフトボールの指導に関わるようになって、1年、2年経つとなかなか離れがたくなって、いまに至るということですね。生徒には高校や大学で自分の将来を見据えて、それに向かって…なんて言う立場なのに、動機がいい加減だと言われそうですが(笑)。

――星野女子高校で勤務された後、1989年に川越東高校に着任されたわけですが、その当時の印象はどうでしたか。

私が着任したのは、本校が開校5年目の時でした。卒業生も出始めていましたが、はっきり言って学校のカラーというものがあまり感じられず、学業の点でも、部活動や生徒会活動などの課外活動にしても、どれもいまひとつで、これといった特徴のない学校だと思いました。男子校らしくもっと覇気を出していこうとも感じましたね。

――それから25年ほど経ち、川越東高校も県内有数の進学校に成長しました。部活動でも各クラブが高い実績をあげるようになっています。

私が校長に就任して以来、諸先生方と力を合わせて教育内容や進学指導、部活動などに力を注いできた結果、これだけの規模の学校になり、1万人を超える卒業生を送り出すまでになりました。本校が順調に伸びて来られたのも、男子校ならではのメリット、特色を前面に打ち出してきたからこそだと思っています。近年は、共学の中高一貫校に改組する動きが全国的に活発化しています。実は本校にも中学校をつくってはどうかという話があったのですが、私や先生方の多くが頑として反対したのです。多くの学校が中高一貫教育に移行する中、本校はお陰様で高校だけで定員がずっと充足できている、これは逆に“強み”になるだろうと。高校でも追加募集をする多くの一貫校と違い、本校のように全員が高校から入ってくる学校ではスタートラインが同じで、学校側としても非常に教育がしやすい。生徒にとっても勉強にしろ、スポーツにしろ、同じスタートラインから始められるというのはプラスの面が少なくありません。このように教員も生徒も共通認識の下で頑張っていけるというのは大きなメリットであり、それが受け入れられているからこそ、生徒数が減少しているなかでも本校が一定の定員数を維持できているのだと思っています。

男子高校であることへのこだわりが強みに

――学校が変わっていったターニングポイントはどこにあると思いますか。

私が着任したころからしばらくは正規のカリキュラムのなかに「必修クラブ」という時間がありました。部活動による部に属さない生徒も週1回の「必修クラブ」の時間においては何らかのクラブに所属しなければならないという制度なのですが、生徒の気持ちも、活動状況も中途半端な感じを受けたんです。本来、部活動というのは自分の意思で行うものであり、それを強制的やらせるのはどうかということで、必修クラブを廃止し、放課後の部活動のみとしました。自分の意志でクラブに入部し、辞めるのも自由としたところ、生徒が生き生きと部活動に取り組むようになり、それをきっかけとしていろいろなクラブが好成績を収めるようになりました。それが学習面にも好影響を及ぼし、進学実績も上がるという相乗効果を生み出したと思います。現在、本校には1300人の生徒がいますが、任意でありながら加入率が9割もあります。これは誇るべき数字だと思いますね。マンドリンクラブが文化系の甲子園といわれる「全国高総文祭」に出場したり、生物部が学校の周りの畑で野菜をつくったりと、文化部も運動部に負けずに活発に活動しています。片やグラウンドでボールを追っかける生徒がいて、片や鍬を持って畑を耕している生徒がいるという風景があるのは素晴らしいことだと思います。また、サッカー部のように100人を超える部員がいるクラブもあります。試合に出られる人数は限られており、高校時代に試合にまったく出られない生徒も多い。それでも自分の意思で3年間続けるということに意味があり、ここでの経験は生徒にとって卒業後、必ず大きな財産になるはずです。

野球部は昨年初めて関東大会に出場した

――在校生の活躍ぶりは卒業生の喜びでもありますが、卒業生同士や卒業生と学校を結ぶ架け橋となる同窓会には何を望んでいますか?

私たちは卒業生が川越東高校出身であることを誇りに持てるような学校でありたいと思っています。一方で、卒業生が社会で活躍していることが在校生にとって大きな刺激になり、目標になっているはずです。最近では、映画監督の石井裕也さんをはじめ、マスコミに登場して話題となる卒業生も増えてきました。しかし、このように表に出なくても、さまざまな分野・領域で活躍している卒業生、在校生が目標としたくなる先輩はまだまだたくさんいるはずです。ですから、同窓会には、そうした卒業生たちの活躍ぶりをどんどん発信してほしいと思いますね。先生方は、親と同じでいつまでも子どもの「応援団」。自分の教え子が活躍している姿を見るのはとてもうれしいものなのです。

――最後に、これからの川越東高校はどうあるべきか、どのような方向に向かうべきか、先生のお考えを聞かせてください。

私は、学校というのは単に勉強だけをするところではないと考えています。知徳・徳育・体育と言いますが、学問と同時に身体を鍛え、社会に生きる人間として恥ずかしくない知性や感性などを育てることも学業と同じくらい重要です。そのためにも、本校はこれからも「文武両道」の精神を貫く学校でありたいと思っています。ニーズが多様化するなかで、変わっていくところもあるかもしれませんが、受け継がれてきた川越東高校らしさは、絶対に残していかないといけないと思っています。

卒業生には「母校に遊びに来てほしい」と笑顔で語る